まず、加須駅の駅ビル「かぞマイン」2階に、「加須名物こいのぼり焼」のお店を発見。のぞいてみると、つぶあん、チョコ、チーズ味などのいわゆる“たい焼き”ですが、かわいいこいのぼり型です。
北口ロータリーに出ると、頭上には風にのってゆらゆらと泳ぐこいのぼり。
そう、加須は明治時代に手描きこいのぼり商店が約40軒あり、日本一の生産量を誇った“こいのぼりの街”でもあるのです。
現在もこいのぼりを製造している会社があり、毎年5月3日に利根川河川敷で開催される「加須市民平和祭」では、全長約100メートルのジャンボこいのぼりを遊泳させるのだとか。
そんな観光情報や加須うどんマップが手に入る加須市商工会館に立ち寄り、2階の「観光レンタサイクル」受付で今回の散歩のおとも・自転車を借ります。
加須駅入口交差点の先に流れる「会の川」沿いの道を行くと、懐かしい雰囲気が漂う石橋がいくつか。長いこと架かっているのだろうと思わせ、かつての風景が目に浮かんでくるようです。
加須は江戸時代に日光街道と中山道をつなぐ脇往還の宿場町、不動ヶ岡不動尊總願寺の門前町として発展。その名残が感じられ、自転車のペダルを踏む回数もゆっくりになります。
「龍蔵寺」の門前の花店では、藤棚の木陰に出されたテーブルでお客さんとお店の方がおしゃべり。時間もゆったりゆったりと流れています。
お寺の説明看板を読むと、「文和4年(1355)、この地で人々を悩ませていた白龍を退治した際、龍の首がもたげたところに龍蔵寺を建て、頭があったところにイチョウを植えた」とのこと。
こちらの木がそう? と見上げ、その樹齢に驚くとともに、こんなに大きな木が秋に色づいたらまた見事だろうなあと考えます。
国道125号線を渡って、いよいよ加須うどん。利根川を渡って總願寺にお参りに来た人々にふるまわれたといわれ、その歴史は300年以上。加須の地に深く根づいてきました。
市内に数十軒あるうどん店のなかで、今回訪れた「子亀」は加須名物・冷汁うどん発祥の店。大葉とごまみその風味が香る汁に長い手打ち麺を付けていただくと、コシがあってモチモチ! あ~、加須に来てよかった!
加須うどんは、お店ごとにメニューを工夫。あつあつ付け汁の「なす南蛮うどん」、スパイシーな汁が絡む「カレーうどん」、具だくさんの「鍋焼きうどん」など、さまざまな味が食べられます。
また、總願寺に残るうどん粉の礼状に“6月25日”の日付があったことから、その日は「加須うどんの日」に。毎年「うどんフェスティバル」などのイベントが行われているそうです。
總願寺は仁和2年(886)、光孝天皇の命により智證大師(弘法大師の甥)が彫った不動明王を本尊としたのが始まり。江戸時代には徳川家の厚い信仰を得て、成田山新勝寺、高幡不動尊と並ぶ関東三大不動の一つとされました。
金色の山門をくぐり、天保15年(1844)建立の不動堂にお参り。堂内には何枚もの大絵馬が掲げられ、軒下を飾る彫刻は繊細かつ荘厳。見上げる首が痛くなってしまうほどです。
境内にはほかにも、隣の行田・忍城から移築された総欅造りの「黒門」、傘の上に「倶利迦羅不動」が施された青銅製の灯籠など、目を惹きつけられるものがいろいろ。
2月には390年以上の歴史をもつ伝統行事「節分会」、9月には一般客も参加できる「火渡り式」などの行事も催され、それらの日にはたくさんの人々でにぎわいます。
總願寺の門前には、約150年前から売られているという「五家宝」のお店があります。五家宝とは、もち米に水飴を加えて棒状に成形したものを同じ長さにそろえて切り、きな粉をまぶした、埼玉県でよく作られている和菓子。
五家宝店「清見屋」のおかあさんに「水飴が入っているから、暖かい時期は柔らかめ、寒い時期は固めになるんですよ」と教えてもらいながら、試食の五家宝をぱくっ。さっくり軽くて甘さ控えめ、ほっとする味で、おいしい〜。
お土産の五家宝をかばんにしまって、線路向こうの玉敷神社へ。寄り道した田んぼ沿いの道で加須の伝承話『不思議田』が書かれた標柱を発見。なになにと読んで、なんとまあ不思議なお話!
黄金色に輝く稲の波の真ん中をぐいぐいとペダルを漕ぎ、県道305号線に合流。けっこう走ったなあと思う頃、4月下旬~5月上旬に樹齢400年の大藤が咲く「玉敷公園」に到着します。
玉敷公園の隣にある「玉敷神社」は、大宝3年(703)創建と伝えられる古社。祭礼では300年以上の伝統を誇り、国の重要無形民俗文化財に指定されている「玉敷神社神楽」が奉奏されます。
境内に立つ2本のイチョウはどちらも樹齢500年で、龍蔵寺のイチョウと同じように秋の紅葉が楽しみ。古くから人々はこのイチョウが色づくのを麦まきの時期の目安としていたそうです。
県道151号線を走って次に向かったのは、寛延元年(1748)創業以来、原料米と伝統の技にこだわり、平成28年度・29年度全国新酒鑑評会で金賞を連続受賞した清酒「力士」の製造元「釜屋」です。
米蔵を改造した売店では、長年愛され続けている「力士」の本醸造から純米大吟醸までを販売。シャンパンのような発泡純米酒やワイン酵母仕込みの純米酒など、新感覚のお酒を買うこともできます。
5名以上の団体だと、一升瓶3700本分の酒が入った貯蔵タンク60本ほどが並ぶ貯蔵庫の見学も可。酒造りの歴史を感じられる道具や酒器が展示された「酒の資料館」も見られます。
特別にご案内していただいた貯蔵庫は芳醇な香りが充満。資料館には「力士」の広告でおなじみだった漫画家・おおば比呂司氏の絵コンテ原画、国民的プロレスラー・力道山のポスターなどの展示があり、見ごたえたっぷりでした。
県道38号線を行くと、戦国時代から江戸初期まであった「騎西城」の跡。天守閣を模した建物内は「郷土史料展示室」になっており、イベント時のみ公開のようです。
レンタル自転車の返却時間がせまってきたので、ペダルを再びぐいぐい漕いで漕いで、加須市商工会館に帰着。自転車を無事返却。
そして、疲れたからだをいたわるには、加須土産をもうちょっと欲しいなあと、「岡安堂」で「鯉のぼり最中」、「小松ベーカリー」で「加須カレーパン」を購入。
加須は昔ながらのもの、地元のものをいろいろと大切に守り続けている街なんだなあと、温かい気持ちに包まれて帰りました。
<インフォメーション>
●観光レンタサイクル/加須市商工会館など市内4ヶ所で貸出・返却を受付9~17時(11~3月は16時まで、土日祝は10~16時)、無料、利用申請書に記入し、身分証明書を提示
●釜屋の貯蔵庫と資料館の見学/5名以上から受付、要予約、無料。http://www.rikishi.co.jp
※記事の内容は、2017年10月10日に散歩したときのものです。各情報は変更になる場合がありますので、必要に応じてご確認ください